空の青 5月(3)

木南はほんの数分前まで同じ湯に智美が浸かっていたと思うとどうにも落ちつかなくて、力任せに手に石鹸を擦りつけていた。
今朝、雅明に連絡したことからまったく予想もしない一日になってしまった。
彼のお膳立てがありがたかったのか、ありがたくなかったのか。
相変わらず食えない奴だという認識を再確認させてくれたことは間違いない。
実際に手間が省けたこともあるし、気が楽になったことも事実だ。
そして何より久しぶりに楽しかったことも事実だった。
ゆっくりと湯に浸かり目を瞑ると緊張が抜けて身体が軽くなった。
湯気とともに立ち昇る微かに匂う芳香が時間の隙間を埋めるように記憶を刺激した。

風呂から出るとさっき脱いで籠に放り込んだはずの服が一つも見当たらなかった。
新しい青紫のバスタオルが一枚だけ置かれていたので、当惑しながらも身体に巻きつけた。
仕方なくそのままリビングに戻るとくすんだ浅葱色のカーテンがルーフテラスのガラスを覆うように大きく引かれていた。
空気が動いてガラス戸の部分が風に膨らんだ。
カーテンを引いてルーフテラスに出るとさっきの自分とまったく同じように智美が手摺に寄り掛かってこちらを見ていた。

「もう、服がなんにもないですよ」
「丸めて放り投げてやったわ」
「げ、下へですか」
慌てて手摺から身を乗りだしたがすぐそんなことをするわけがないと思い直した。
「うそ」「隠したの」
彼女を囲うように両手を手摺についた。
「これで帰れないでしょ」
「そりゃそうでしょ」「逮捕されちゃうじゃないですか」
「ちょうだい」
「服ですか?」
「そう」
智美は楽しそうに困り果てた木南の顔を覗き込んでいた。

「明日、買ってきてあげるから着ていたのはちょうだい」「たまに干す男ものが欲しいの」
「あぁ、それならそう言ってくださいよ」
「でも、汚いから別の持ってきますよ」
「これじゃなきゃ、いや」
「じゃ、洗うから洗濯機貸してください」
「いや」

「ほんとはね、毎晩着て寝るの」
木南は返答に窮した。
「わたし変態かな……」
智美の目がきらきら輝いていた。

挿絵3

『空の青 5月(3)』

「じゃぁ、代わりに先生が今履いているパンティください」
一笑にふされると思ったけれど、彼女の目が一気に潤んだ。
「先生なんて言わないで」「もうあなたの先生じゃないし」
「えっと、智美さんのパンティと交換」「それならいいです」
「どうするの、そんなもの持って帰って」
「一緒に寝るんです」
彼女の顔が夜目にも赤く染まるのがわかった。細い指が耐えられないように木南の裸の胸に触れた。
「さっき代えたけど、もう汚れてるわよ、きっと」
「ええ、その方がいいです。今履いてるのでないと駄目です」
「匂いとか嗅いで、舐めたりします」
「そんな…」
「知らない人のだったら変態かもしれないけど、智美さんの今履いてるのなら純粋な気持ちの表れでしょ」
「でも、その、やっぱり羞ずかしい」
「それでなきゃ駄目です。交換でしょ、今ください」
「本気?」
さんざん躊躇して、木南の胸に額を押付けたまま智美は自分で裾を捲り上げて下着を下ろした。足首から抜き取るとき思わずよろめいて木南がその肩を支えた。

木南は智美が右手で握り締めて離さない真っ白なパンティを毟り取った。そして、彼女の目の前で広げたパンティの股間の部分にむしゃぶりついた。
「だめ、だめ」
思いきり抱きつかれて腰のタオルが落ちた。
パンティを咥えたまま、豊かな少しカールのかかった黒髪に触れた。梳くように毛先に向かって空気を入れると、艶やかに光る髪がふっくらと盛り上がって柔らかく指先に絡みついた。
黒い髪の中に小さく浮き上がった顔を間近で見とれていた。
去年の春、肩までしかなかった髪は背中の中ほどに届くまでに伸びていた。両手で髪に風を入れるように持ち上げたり梳かしたりその柔らかい感触を楽しむ。
胸に触れていた彼女の両手がゆっくりと皮膚を滑って下に落ちていった。ほとんど真上を向いているはずの硬直したものを両手で包み込まれて一気に頭に血が上り始めた。
濡れた先端を擦られて思わず快感に躰が震えてしまった。
「ひさしぶりね」
「おれだけ裸ってずるくないですか」
「一年以上、音沙汰無しの罰」
休みなく動く彼女の両手に全体を包み込まれて蕩けそうな快感が突き上げて来た。
「そんなにされたら困っちゃいますよ」
「困りなさい」
「だってその、出ちゃいそうだし、服にかかっちゃいますよ」
「まだだめ」「こっちに来なさい」

腰に腕を廻されてびっくりするほど強い力で後ろに引かれた。口にパンティを咥えたまま白いテーブルに背中を向けて立たされた。
「座って」
テーブルに裸の尻をつけるとひんやりした木の感触が伝わった。
「もっと深く座って」
躰をずらすと胸を押されてテーブルに押し倒された。真上を向くとすぐ傍らに智美の顔が夜空を背景に白く浮かんでいた。滑らかな指先が躰の隅々を這いまわった。腕で彼女を抱き寄せようとすると、するっとかわされてしまう。
「だめ、放っておいた罰よ」
腕を掴まれて頭の上で組まされた。
「動いたら駄目よ」
手の平が首から胸を撫で上げて下半身に向かった。伸ばした足を腕が這い回って抱え込まれるように大きく足を広げられた。濡れた熱い感触が股間に触れて這い回る。両の睾丸を片側づつ口に含まれて転がされる。思わず力が入ると舌先が蕩けるように動き回る。溢れた彼女の唾液がつぅと皮膚を流れ落ちたのがわかった。その流れを追うように舌先があちこちを這いまわるとくすぐったい快感に躰が反り上がった。硬直した先端が刺激が欲しくて脈打つように動いた。
「ひどいですよ」
半分塞がった口が上手く開かなくて発音が変だ。
「手を動かしたら駄目よ。そのまま、もっと動かしなさい」
言われなくても躰は勝手に動いてしまう。
「我慢できないです」
「我慢しなさい」
「わたしがどれだけ困ったかわかる?」
「そう言ってくれるとうれしいですけど、よくわからないです」
「わたしに散々いやらしいことしたじゃない」「憶えてるでしょ?」
「えっと、憶えてるけど、でも無理やりしたわけじゃないです」
「忘れられないのよ」

**************************

「味が薄くなってきちゃいましたよ」
「もう、いやらしい」
「もう一度履いてくださいよ」
智美の顔が真上から覗きこんだ。髪の先が胸や首にかかってくすぐったい。
「さっきより、もっとその…汚れちゃうわよ」
「全然汚くなんかないですよ」「智美さんの」
「ほんと?」
必死に頷くと口に咥えていたものが引き出されて、同時に唇が合わさった。
「めちゃくちゃ嬉しいけど、もう、羞ずかしくておかしくなりそう」
彼女はそう言いながらも手に取った自分のパンティを握り締めていた。
「履かせてあげましょうか?」
「自分でやるわ」
彼女が細いサイドを持ち上げると、小さな白い布が下半身の所定の位置に納まった。木南はそっと手を伸ばして、上端からはみ出ている陰毛を指先で小さなパンティの内側に押し込んだ。
「やっぱりでも、ちょっと…その凄いわよ…」
智美が躊躇した。
寝転がったまま右腕で彼女を引き寄せる。パンティの前と後ろを交互にに持ち上げて布地を躰に食い込ませる。更に股間に手を入れてパンティを容赦なくいちばん敏感な部分に押付けた。布地の上から指先を割れ目に沿って抉るように動かして食いこませ、布の上から膣口と肛門に指先を捻じ込んだ。生暖かい液体が布地から滴るほどに溢れたのを感じて手を離した。
「これぐらいかな」「早く下さい」

両手で頭を抱えたまま、されるがままになっていた智美が壊れた人形のように、ぎくしゃくとパンティを下した。瞳孔が開いて視線が動かなかった。
感情が麻痺したように、そのまま真上を向いて臥せている木南の顔に自分の下着を押付けた。いちばん濡れた部分を広げて彼の目と鼻を覆った。彼女の喉の奥から辺りに響く嗚咽が漏れた。
ぬめった布地で顔が滑った。
木南の歯が布地の先端を咥えた。智美はそのまま丸めるように残りの部分を口のなかに押し込んだ。真上から見下ろしている彼女の目から木南の顔に生暖かいものが降り注ぐ。涙が窪んだ木南の目に溜まって、溢れて、目尻に流れた。

**************************

「さっきから、触ってくれなくて、気が狂いそうで」
「触らないで出しなさい」
「触ってくれないんですか」
「罰だから」
「気が狂っちゃいますよ」
「そう。いいわよ。狂っても」

「出すところを見たいわ」
「起きてもいいですか?」
腕を引かれて身体が起こされた。膝を割るように智美が跪いた。
「汚れちゃいますよ、その、服とか」
滑らかな布地に乳首がぽつんと盛り上がって、暗く透けて見えた。
「いいわよ」
膝を持ち上げられて智美が自分の肩に掛けた。その躰を引き寄せる。
はちきれんばかりに膨れ上がった性器の先、ほんの数センチのところに智美の顔があった。
「こんなきれいな顔に…」
「目に入っちゃうかもしれませんよ」
「いいわ」「出しなさい」
「髪にかかっちゃいますよ、絶対」
「かけなさい」
先端がひくひくと震えて狂おしい感覚が突き上げてきた。
「たくさん出して」
「顔にたくさん、たくさんかけて」
顔が少し近づいて先端が柔らかい頬に触れた。
「顔で擦って」「たくさん、たくさん」
腰を突き出すと先端が彼女の頬に当たって柔らかく窪んで滑った。
無我夢中で突きまくる。
すぐに鼻も唇も頬も額も濡れて光り始めた。
頭の芯が引きつった。
木南は目くるめく陶酔感と共にその美しい顔に精液をぶちまけた。

びゅという音とともに最初の一撃が左目の上にかかった。
智美は顔に勢いよく打ちつける精液が目に流れ落ちても、痙攣する木南を何一つ逃すまいと大きな目を見開いたまま瞬きもしなかった。

飛び出した液体が智美の顔に溢れて流れた。
ありったけのものを搾り出した。
筋になって流れる精液を舌と指で少しでも口に入れようとしているのを見て木南は奮えるほど感動した。案の定、髪からナイトウェアまでに白い液体が飛び散った。
「すいません、やっぱり汚しちゃった」
髪についた精液を指で拭おうとすると彼女が怒った。
「だめよ。あたしのなんだから」
「もっとだしなさい」
「すぐには無理ですよ」
小さくなりかけていたものを口に含まれて、残った液体と周囲に溢れたものを丁寧に吸い取られた。木南はそのまま下腹に顔を押付けている智美が愛しくて、その豊かな髪をいつまでも撫で続けていた。

『空の青 2−3』(続く)


戻る