空の青 8月(1)

月末と週末が重なっていつもの金曜日なら目が廻るほど忙しいはずだが、その日は人の出入りも少なくて、近所の常連客が大半を占めていた。
このところ暑い日が続いているせいかもしれない。大方、屋外のビアガーデンにでも流れているのだろう。
大学は補講と再試を除けば既に夏休みに突入していたが、近くの研究施設は一年中稼動しているから人がいないというわけではない。夕方になれば生協では物足りない研究者や近くの官公庁の役人が数人のグループでやって来ることが多かった。店主の親爺からはけっこう充てにされてしまっていたから、夏休みだからバイトも休みたいとも言い出しにくく、取敢えず来週いっぱい、つまり、盆前まではバイトに精を出すことにしていた。

盛夏とはいえ、夜になって日差しがなくなれば一気に気温が落ちていく。
木南寛は手隙の時間にビールの空き瓶を集め、ケースを抱えて裏の路地に積み上げた。
残飯をまとめたゴミ袋の口をきつく縛って塀際の薄汚れたブルーのポリバケツに放り込む。
澱んだ空気に路地のすえた臭いが漂った。
重なり合うような軒の隙間から見上げた狭い矩形の空に大きな赤い月がかかっていた。
夜が僅かな湿り気を帯びて、川風が身体に纏わりついた眠気をさらっていった。

9時過ぎ、今夜はそろそろ終わりかなと思った頃、カラカラと軽い音を立てて格子戸が開いた。おや、こんな時間に新規の客は珍しいと振り向いた寛は入ってきた人影を見て、目を見張って硬直した。
黒っぽい半袖ジャケットに、胸の開いた濃いヴァーミリオンのシャツ。胸元を飾るシルバーのアクセサリが抜けるような白さを背景に照明に細く光った。黒いスカートからはすらりとかたちのよい足が伸びて、黒く光ったパンプスはいつもより踵がずっと高かった。
条件反射のように口から出かかった言葉を途中で呑み込んだ。
「いらっしゃいませ。お一人様ですか……」
松崎智美だった。

思いもかけない場所で予想もしなかった人を目の当たりにして寛は呆気にとられた。バイトをはじめてから雅明が一度あけみちゃんを連れて冷やかしにやってきたが、智美は一度も顔を出したことはなかった。
夕実やあけみちゃんも、さながら、さなぎから孵った蝶のように美しい羽を広げ、その若々しい魅力をふりまいていたが、もともと美しい蝶だった智美にはそれにも増して喩えようのない凛とした気品があった。その足元にひれ伏して、縋り付きたくなるような……賛辞の言葉などすべてを無効にする仄かに染まった空気。
そんな空気の色が直感的に目に飛び込んできて、瞬き一つすることができなかった。

そんな寛を見詰めながら、薄暗い照明に浮き上がった智美の白い顔が微かに微笑んでいた。
「こんばんは」
僅かに傾げた首筋が滑らかに白く光り艶めかしい匂いを放った。
「えっと、あっと……」
「カウンターがいいな」
くりくりと動いた黒目が彼女の希望を指し示す。
誰も座っていない空いたカウンターに慌てて席を用意した。
彼女が右手に持っていた大きめのバッグにようやく気付いて、預かってレジ裏の棚にしまい込んだ。ぎくしゃくとしながらも、ようやく営業用のスタイルを取り戻し、松崎にメニューを差し出した。
「お飲み物は?」
まるで初めてのときのように声が上ずった。
「冷酒。甘くないやつ」

少なくとも夜は、若い女性が一人で呑みにくるような店ではなかったから、彼女は常連客たちの注目を一身に集めていた。店主の親爺までが顔面ジェスチャーで話し掛けてきた。
智美はそんな周囲の視線には目もくれず、小さな店を動き回る寛を楽しそうに眺めていた。
さっそく常連の一人に捕まった。
「誰? あれ。彼女?」
本人は声をひそめているつもりらしいが、酔っているからもう店中に筒抜けだ。
智美が軽く手を挙げて寛を呼んだ。
「お勧めは何? お腹空いてるの」
思わずいつものようにその肩に触れそうになって、苦笑した。
「今日は生の岩牡蠣。そのお酒にもぴったり。あとは烏賊刺しでどうです?」

20cmは軽く越える大ぶりの牡蠣を氷に載せて運ぶ。上の殻は貝柱をこそいで載せてある。
「殻は外してあるんで下の貝柱をこそいで、レモンでそのままどうぞ」
智美が器用な手付きで小さなステンレスナイフを大きな乳白色の身の下に入れ、軽くこそぐと殻から身が外れた。
「大き過ぎるよ。どうやって食べるの?」
「野蛮だけど、殻ごと手で持って傾けて、一口でぐっと。海水の塩味も効いて最高です。殻、エッジが尖ってるから唇切らないでくださいね」
ピンク色の唇を僅かに広げて牡蠣に向き合った彼女はぞっとするほど魅力的だった。
店中が静まり返ってその表情を見ている。
どんなに野蛮な食べ方をしても、彼女が食べれば上品に見えてしまう。美味しそうに一口で大ぶりの牡蠣を平らげた。
僅かな、遠慮がちなざわめき。
「寛ちゃん、お酒!」
艶めかしく白い喉が扇情的に動いて、寛は見慣れたはずの光景にすっかり魅せられていた。

二週間ほど前から、明日、明後日は二人で過ごす予定にしていた。
一昨日、来週は多分生理来そうだから今週会えるよね、と恥ずかしそうに念押しの電話を掛けてきた彼女がどうしようもなく可愛かった。
でもあのスタイルはどうしたのだろう。それに今夜来るという話ではなかったはずだ。別に拙いというわけではないが、まるで誰かがスケジュール調整をしているかのようにぴったりと休日が埋まっていく。
お酒を一合お代わりした智美の目元がほんのり染まっていた。
見詰めていると目が離せなくなってしまう。無理やり視線を引き剥がし仕事に頭を切り替えた。

席を立とうとしている彼女に声を掛けた。
「ありがとうございました」
レジで誰にも分からないようにリングから外した鍵を手渡した。
智美の顔が本当に女神のように華やいだ。
「ごちそうさま」
極上の笑顔を目の当たりにして寛は躰が震えた。

「もう、いいぞ。今日は。客いないし」
福田の親爺が寛に声を掛けると、常連が騒いだ。
「俺たちは客じゃないらしいな」
爆笑が渦巻いた。
「いいなぁ。寛ちゃん。あんな別嬪の彼女がいてさぁ」
普段、やるべきことはきちんとやっているせいもあって、こういった場合はけっこう融通を利かせてくれる。ささっと洗い物と裏方の掃除を済ませて店を出た。
彼女が出てから一時間弱が経っていた。
7月最後の薄墨色の空には、真円に僅かに欠けた月がときおり薄い雲のベールを纏いながら、偽物のプラスチックのようにぽっかりと貼り付いていた。

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アパートの階段を駆け上がる。三階のいちばん端の部屋。
急いでいたせいもあって少し息が切れた。
ドアノブに手を掛けようとして、キッチンの窓の奥、部屋の明かりが消えて真っ暗なのに気が付いて寛は戸惑った。
え? 帰った?
一瞬うろたえて、ドアノブを乱暴に掴んだ。
鍵が開いていた。
「先生?」
差し込んだ月明かりがたいして段差のない上り框の片隅に綺麗に揃えて置かれたパンプスを照らした。
不審の暗い淵に微かな安堵が明るく灯った。
暗闇に手を伸ばして照明のスイッチに触れた、と思ったとき、すっと空気が動いて、闇のなかから白い動物が飛び掛ってきた。

避ける間もなく柔らかな塊がぶつかって壁に押し付けられた。反動で締まり切っていなかったドアが跳ね返るように開いた。月明かりが白く躍動する獣の姿を捉えた。
滑らかな腕が寛の服の内に潜り込み、引き剥がすように毟り取りはじめた。シャツを首から抜き取られ、下着ごと綿パンツを引き下ろされると、白い獣は柔らかく湿った匂いと微かな花の香りをそのしなやかな躰に纏い、激しい息遣いで獲物を求め貪りはじめた。

開ききったドアから夜風と月の光が差し込んだ。
怒張して真上を向いた性器が熱い感触に包まれる。唇と舌が総動員された刺激に思わず我を忘れそうになる快感が背を貫いた。小さな頭を両手で抱え、屈み込んだ智美の口に正確に性器を押し込んだ。苦しそうな喘ぎと舌の攻撃に先端が溶けはじめた。
「ダメだって…出ちゃいますよ……」
ゆっくりと引き剥がすように彼女の口から性器を引き抜いた。
立ち上がった彼女がもの凄い力で首筋にしがみついて身動きが取れない。ドアを閉めようと手を伸ばしてもノブは遥かな先で夜風にときおり震えていた。
生暖かい唇が音を立てて合わさって濡れた舌と舌が滅茶苦茶に絡み合う。
白くて熱い塊。獰猛でしなやかな獣。
智美は全裸だった。
「先生……、だめだって……。外から見えちゃうよ……」
廊下の端だから前を人が通ることはほとんどないが、二階家の屋根の先30mほどのところには別のマンションがバルコニーを向けて建っている。幸いバルコニーで夕涼みをしている住人はいないようだが、彼女の攻撃は一向に止まないどころか、一層の激しさを加えはじめた。
「まだダメ…ちゃんと……たくさん…中にちょうだい…大丈夫だから……」
汗で前髪が額に張り付いて、妖しく輝いた瞳を月の光が滑らかに濡らした。
狭い玄関のたたきに蹲った智美が背を向けた。天頂に向けて僅かに角度を変えた赤い月が持ち上がり始めた豊かな尻をしっとりと照らし出した。
膝を突いた寛の目の前に、智美の白く丸いふくよかな尻が高く掲げられた。
微かに色づいた肛門が襞の一本一本を露わにしてその中央に震えていた。その下の割れ目から分泌された液体が月の光にきらきら輝いて寛を誘った。
目を離すことのできない鮮烈な光景。
そっと顔を近づけると、智美の匂いが艶かしく立ち昇った。
顔全体をそのぬめりに押し付けた。
舌先でクリトリスを突きながら唇で陰唇を拭った。鼻先を肛門に捩じ込みながら頬で性器を抉った。真下から高くか細い悲鳴が沸き上がり、尻全体が波打つように動きはじめた。
「気持ちいい……ねぇ…凄い…気持ちいい」
ぴちゃぴちゃと音を立てて顔全体がぬめりに潜り込んだ。尻全体を腕でがっしりと抱え、智美の敏感な部分を抉り、膣口に舌先を捩じ込む。
濡れた粘膜が微かな酸味を伴って律動した。
悲鳴が一段と甲高くなり、がくがくと腰全体が砕けそうにしなりはじめる。
「もう……もう、だめ…ね、ちょうだい……中にちょうだい…」
その言葉を待っていたかのように、自らのものを智美の淫猥に濡れた部分にあてがった。焦らすように往復させると、待ちきれない智美が尻を突上げて呑み込もうと狂ったように尻を振る。完璧な結合を果たして真っ白な尻が薄闇に妖しくうごめいた。

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何度目かの絶頂が通り過ぎ、目くるめく時間が過ぎ去っても智美は仰向けのまま膝を抱えていた。
「どうしたんですか? その格好」
智美が恥ずかしそうに目を伏せた。
「だって……出てきちゃう。もったいないから……」
「?」
そっと真上を向いた性器から肛門に指を這わせると智美が強く目を瞑ってうめいた。
「せっかく…たくさん貰ったのに…」
「あぁ…そんなもん…欲しければいくらでもあげますよ……なんか、感激しちゃいますよ。そんな風に言われると……」
「たくさんくれると、すごく嬉しいの……」
智美の目が優しく光って名残惜しむように唇が合わさって、舌と舌が絡み合った。

挿絵51

『空の青 8月(1)』

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朝の光。冷たい空気。
今日も暑くなりそうだ。
鳥の声。川の音。ときおり金属的な振動と共に流れていく車の音。
窓の向こうで休日の朝がゆっくりと胎動をはじめた。
すぐ隣で、しがみつくように寝息を立てている智美の爽やかな美しさに見蕩れてすっきりと目が醒めた。
滑らかな白い裸の肩、華奢な腕、首筋から胸元への柔らかなカーブ。
ありとあらゆる淫蕩の限りを尽くした昨夜が嘘のような気高さと清らかさ。
その落差に目が釘付けになってしまう。
清潔で真っ白なうなじから少女のように細い背中。長い睫毛がきれいに合わさって、昨夜、散々寛を貪った唇がこじんまりと整っていた。
タオルケットの内側に手を差し入れて、滑らかな肌の感触と豊かな腰の肉付きを愉しむと、当たり前のようにむくむくと下半身が疼きはじめた。
思い切って二人を覆う薄いタオルケットを跳ね除けた。
ブルーグレーのシーツに小さく丸まった智美の躰が一際白く輝いた。触れずにはいられない完璧な曲線に手が吸い付いた。むっちりとした尻から太腿はしっとりと湿って気持ち良いほどに冷たい。
朝の青味がかった光の中で、顔を寛の肩に寄せたまますやすやと眠り続けるその横顔。
男を魅了し狂わせる形を前にして寛は再び目が離せなくなった。

足を抱くように躰を丸めているから、尻の側から性器が丸見えだった。昨夜の激しい交情などまるで嘘のように滑らかな皮膚が二つに割れて、薄く色づいた陰唇が清楚に顔を覗かせていた。そのすぐ上には小さく窄まった肛門が抜けるような白地に柔らかく溶け込んで薄紅色の花を咲かせいていた。
添い寝をするように背後に横臥して、滑らかな肩に、起こさないようにそっと口を触れる。
腰を前に突き出して、いきり立ったものに手を添えて彼女の柔らかい部分をかき分けて探る。ほんの僅かに前後に揺すりながら。
夢見心地の彼女の部分に潤いが溢れるのをじっと待ちながら、起こさないように先端の快楽を愉しむ。二人の分泌液が混じりあったころ、先端が熱さに導かれ、小さく腰を突き出すと先端が彼女に埋まった。ほんの数cmの結合。締め付けと蕩けそうな熱に包まれて、静止したままその感触を味わい尽くす。
背後からそっと乳房を抱くと智美が微かな呻き声をあげた。うなじに口を寄せて智美の匂いを胸一杯に吸い込む。
耳に被った軽くウェーブした髪に、昨夜の熱情の証のように飛び散った精液が白く固まっていた。
「今日はどうするの?」
閉じられたままの瞼。口だけが僅かに開いて掠れた細い声が応えた。
「ど…どうするって、え? なに? あ…また…入ってる……」
「先っぽだけ」
「気持ちいい……うん、困っちゃう…も、もっと…奥まで……」
「奥まで何?」
寛を誘うように膣が脈動した。
「いちばん奥まで……欲しい……」
最初の頃は恥ずかしがって盛んに抵抗したバックや跨るかたちも、今は恥じらいながらもそれなりに応えてくれる。背後から抱き締めるように腰を突き出すと迎えるように尻が突き出され熱い壷に躰がぴっちりと埋まった。躰をぴったりと密着させて膣で包まれる感触を味わうように腰をねじ入れる。波打つような締め付けに先端が蕩けそうだ。
「ねぇ、う、海に…行こうよ。水着…持って来た…から……」
耳朶を軽く齧ると悲鳴のような声が湧き上がる。
「でも、明日は食事して、ちょっと付き合ってほしいところがあるの……」
「いいですよ。望みのままに…なんでもしますよ…」
膣の締め付けがぐっと強くなって、リズミカルに尻が突き出される。
「じゃぁ……」
豊かな乳房にあてがった手を智美の手が押さえつけた。
「じゃぁ…子宮に、ね、直接出して。たくさん。たくさん……」
喘ぎの合間に掠れた声が射精を促した。

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いつもより大きいけれど軽いバッグには今日の服は含まれていなかったらしい。
着るもの貸してと言われ、ふらふらしながらクローゼットを漁る。
もちろん、満ち足りた笑顔に促されると何も言えない。
小さめのシャツを手渡すがもちろんだぶだぶ。スカートはやはり持っていないから、仕方なくダークグレーのショートパンツを手渡した。
「パンツは?」
「それは持って来た」
「あら残念」「ないほうが好みですけど」
「それは……服が汚れるからだめ」
上はだぶだぶだが下はけっこうぴっちりだ。
「まぁ、美人だから何着ても似合いますよね。スタイルも抜群だし」
「お尻はおっき過ぎて…カッコ悪いってば」
「その割にはよく見せてくれるじゃないですか…大好きですよ、先生のお尻」
丸く膨らんだショートパンツを撫で上げると目元を赤く染めて恨みがましい目が睨んだ。

「あ、これも」
「いいけど……長袖ですよ?」
「いいの。日焼けしちゃうでしょ」
「海行って、日焼けしないってのもなんだか矛盾してません?」
「別に美白とかには興味ないけど……だって…、だって、色白の子が好きなくせに」
怒ったような目つきが可愛い。
「へ?」
「久野さんだって、菊川さんだって、みんな抜けるように白いじゃない」
「え?」
鼻を摘まれた。

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簡単な朝食をとって車で出た。
国道から分かれ海沿いの間道を南下する。半時間も走れば蛇行した雄大な河川の河口を渡り、防砂林に突き当たり広大な砂浜に出る。都市を出れば人口も少ないし、気候温暖というわけでもないから海水浴場などというものも観光地以外には滅多にない。
隣に座る智美は上機嫌だ。
交通量が減ったのを見越してときおり躰が寄り掛かってくる。
左手でシャツの上からブラジャーをしていない乳房を撫で、乳首を際立たせるように掴むと、それを待っていたようにシートベルトを外した彼女が倒れ込んできた。
下腹に頬を押し付けて悪戯っ子のように脹らみに歯をあてる。
「へへ。いたいた」
くりくりと目が動いてはっきりと固くなった部分に布地の上から爪を立てた。
「危ないって……」
もちろんそんな言葉は何の意味ももたない。
「わたしが運転してるときは好き勝手するくせに〜」
片手が懸命に這い回って躰を被う布地を掻き分ける。
脹らみを押さえつけていた拘束が緩まって、目的のものを引っ張り出した。
細い指先が固くなった棒を包み込み、小声で何か話し掛けている。ちょっと力を入れて動かしてやると智美がおもちゃを手にした子供のように喜んだ。
すぐに先端が暖かさに包まれる。
こそばゆい快感が性器をいっそう硬直させた。
右手でハンドルを固定し、前を見据えたまま、左手で無我夢中で愛撫を繰り返す智美の首筋を撫で上げる。大きく開いた襟から手を潜り込ませ、滑らかな背を手の平全体でさする。もどかしくなって腕に力を込めて躰を引き寄せると、口を離さないままシートに膝をついた智美の尻が高く持ち上がった。

どうにも我慢ができなくなって車を路肩からはみ出させ、すぐそばに迫っている防砂林の濃い緑に沿うように停めた。
午前11時。休日の真昼間だから交通量はほとんどない。
エンジンを切って腰にしがみついている智美の躰を起こす。
何が起きたのかわからないのか、きょとんとした顔を持ち上げると濡れた唇が妖しく光った。
ドアを開けて外に出る。ドアが閉まるのももどかしく、反対側に廻る。
びっくりして目を見開いている智美の側のガラスをノックするとロックが外された。
引きちぎるようにドアを力任せに開き切り、車内の日陰で艶かしく輝く白い腕を掴む。
何か言いたそうなすべてを無視して智美を日向に引きずり出した。
車に両手をつかせて背後から乳房を握り締める。
漏れた悲鳴が静まり返った松林に染み渡るように消えた。
かまわず前に手を廻しショートパンツを下着ごと引き摺り下ろす。
触れる必要はない。既に彼女の部分は潤いすぎるほど液を湛えているはずだ。
剥き出しになった尻をありったけの力で押さえつけ、完全に硬直したものを容赦なく根元まで押し込んだ。
犯すように腰を打ち付ける。
智美の尻が迎えるように波打ちはじめると、その動きを封じるようにいきり立ったものを引き抜いた。
振り向いた智美の目が非難と懇願を訴える。
その肩を押さえつけ、有無を言わせぬ力で頭を沈ませる。
しゃがみ込んだ頬に怒張した性器があたって弾けた。
車のボディを背に、逃げられない頭を押さえつけて小さく窄まった口に先端を押し込む。
智美の粘液でべっとりと濡れた男根で頬の内側を抉り、根元まで押し込んだ。
舌がまとわりつくように動きはじめると、再び智美を引き立てて尻を抱える。
毟り取るように貸したTシャツを捲り上げ、ショートパンツを下着ごと足首から剥がし取る。
全裸の智美を後ろから突きながら乳房を捻り上げた。
突き上げる腰の動きと受け止める尻の動きが一致すると、再び唐突に引き抜いて、下の口で智美の蜜をたっぷりと吸った性器を上の口に含ませる。溢れた液体が顎を伝い、唾液と混じり真っ白にたわんだ乳房を汚す。
その繰り返し。
秘所を潤す液体と溢れる唾液で智美の美しい顔がぬらぬらと濡れて光った。
明るい日差しの下で智美の表情が恍惚に歪む。
陰唇から溢れた汁が肛門を濡らしているのを見て、捩じ込む先を僅かに上にずらす。
意図を察知した智美の下肢が緊張に震えた。玩ぶように擦り付けるだけで長く尾を引いた悩ましい声が迸る。
液体を馴染ませながら軽く力を込めると先端がするりと潜り込んだ。
強烈な締め付けと降り注ぐ強烈な陽光に目が眩む。
ガラスに額を押し付けた智美が頭を掻き毟る。膝が抜けそうになった智美の躰を抱え上げると汗が吹き出た。
挿入したときと同じように僅かに円を描くように力を抜くと筋肉の締め付けに先端が押し出された。蹲って肩で息をしている智美の顔に濡れて赤黒く光った先端を押し付けた。
「最後はどこに欲しい?」
「待って…待って……いまきれいにする…」
なんの躊躇いもなしに怒張した先端を呑み込んで、舌と唇で強烈な愛撫がはじまった。だらだらと溢れた唾液が躰を伝い太腿にぽたぽたと丸い輪を作る。
見ているだけで気が狂いそうになる白さとかたち。
恥ずかしそうに一度だけ寛を見上げた智美が足元で小さくなった。
雑草に覆われた緑の褥に膝をつくと滑らかな背中が細くしなる。顔を地べたに押し付けて広げた膝の上に躊躇いがちに真っ白な尻が花開いた。
草の強い野生の匂いに智美の放つ甘酸っぱい女の匂いが混じった。
恥ずかしがりやの真っ白な尻が真昼の白光に際立って、宝物を頂くように放恣に広げられた躰の前に跪く。
背中を押して更に尻を際立たせ、腰のくびれを撫でさする。
「どっち?」
足の間から二本の指が這い出て薄赤く光る陰唇を左右に広げた。
「…ここ」
めくれあがった濡れたピンク色の襞の間にもっと鮮やかな薄紅色が覗いてこんこんと湧き出る泉のように透明な液体を湛えている。
「どこ?」
応えるように直射日光に晒された膣口が窄まって複雑な影がその位置を正確に示す。
意地悪く襞の下端に顔を出したクリトリスを擦りながら、人差し指を真上を向いた肛門に差し込む。
「ち…がう…あ、でも、や…止めないで。そのまま…そのまま……」
身悶えして意志を伝えようとする智美が愛しい。
「そ…のまま…指で広げたところに…わたしの穴に…精液をちょうだい…たくさん…欲しい…の〜」
限界だ。
詠うように躰を奮わせる智美の尻をがっしりと両腕で抱え、耐え切れなくなった欲望を熱く濡れた膣に注ぎ込んだ。

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テレビで観る、人しか見えないどこかの海が嘘のような、何もない空と海。
聞こえるのは寂しいくらいの穏やかな波の音、後背の松の葉を吹き抜ける風の音。
空の青と海の青が一線で交じり合い曖昧に溶け合って、砂浜がドライアイスを焚いたように白くうごめいている。
海霧だ。
けだるく澱んだ夏の真昼の空気を冷たいくらいの海風が吹き払う。
雲一つない透明な空の青が二人を結晶に封じ込め、海の青が足先を羊水に浸かる胎児のように暖かく濡らした。霧が二人以外のすべてを呑み込んで、冷たい香気を放ちながら渦巻いた。
この世のものとは思えない光景。
散々はしゃぎまわった智美は、霧の褥に胡座をかいた寛の足の上に仰向けに乗り上げて、気持ち良さそうに目を瞑っていた。
躰のほんの一部しか被うことのできない大胆な水着を着けていても、ちっともいやらしさを感じない。海霧すらも避けて通る、空気がそこだけ透明度を増したように白い輪郭が際立った。
はっきりとした膨らみを持った胸は決して大き過ぎず、整った高さを保持していた。丸みを帯びた腰から太腿へかけての曲線は引き締まって、しっとりと張り切った滑らかな肌を纏っていた。無駄のない腹は誰にも真似ができない繊細で滑らかなカーブを描いて小さな水着の影に収束していた。触れることが許されない神聖な美といつでも迎え入れてくれる親密な優しさが目の前で同居する。
寛は立てたパラソルの影で、安心して開けっぴろげに投げ出された智美の肢体を存分に眺めた。
どんなに大胆で扇情的なポーズでも下品な生臭さを感じさせない、それでいて惹きつけた目を離さない聡明さと匂い立つような魅力。そんな女性がなぜ自分の膝の上にいるのか考えれば考えるほど不思議だった。たぶん寛の数倍は貴重な一年という時間を無為に過ごしたはずなのに、当たり前のように再び受け入れてくれた智美に申し訳なさと愛しさが同時に込み上げた。

『空の青 5−1』(続く)


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