買い物から戻って夕食の下拵えを始めた。夕方にはまだかなり間があったけれど、まともな料理を作ろうなどと思い立ったのが久しぶり過ぎて、わたしは出来映えにまったく自信が持てなかった。取敢えず時間を掛ければなんとかなるだろう、というのが挽回のための唯一の解決策だった。
春先につまらない怪我をしたとき、彼にはいろいろと世話になってしまった。そのとき動けないわたしに代わって彼が用意してくれた食事は悔しくなるほど美味しかった。生意気な子供ぐらいにしか思っていなかった自分の不分明と傲慢さが恥かしくなった。
教師になって三年ほどが経って、仕事として一通りのことをこなせるようになって舞い上がっていたわけではないが、どこかにこんなものかという気持ちがあったかもしれない。
だから、曇り始めていたわたしの目を開かせてくれた彼には素直に感謝した。最初に示された彼の好意は、去年一年、わたしに迷惑を掛けたことに対する贖罪の気持ちもあったのかもしれないが、甘えてばかりいるのもバランスが悪いと思っていた。
浮かれていたつもりはないが、彼が来るということはわたしのなかでそれなりの意味を持っていたと思う。先日、彼に案内されて桜を眺めに行った。なるべくしてか、彼に感じていた好意はそれなりの結果を生んだ。でも、今ならまだ引き返せる、そう頭の一部は諭していたが、あの日から間が空くにつれわたしは純粋に苛立っていた。
彼は何故連絡してこないの?
足が動かなかったとき、湿布を替えてもらったり、抱き上げて運んでもらったときの彼の物怖じしない単刀直入な行動力と、若いなりのバックグラウンドからにじみ出る配慮がとても好ましく思えたのは事実だ。身体が大きいわけでも、とりたてて男性的というわけでもないが、彼の精神的な逞しさはわたしがイメージしていた幼さとはまったく違ったものだった。
そう、正直に言おう。
連休に入る前、放課後一人のところを捕まえて、わたしは彼を誘った。
食事においでと。
実際、プライベートで自分の教え子である生徒と示し合せて会うことは初めてだったし、単なる教師と生徒という関係を超えた部分で、惹かれるものがあるという経験も初めてだった。
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エプロンをせずにフライパンを使っていたせいで油がシャツとパンツに飛び散って茶色い染みを作っていた。だいたいエプロンなんてここ数年見たこともなかったから、着ることすら思いつかなかったぐらいだ。きっとどこかに押し込んであるのだろう。
汚れた服を洗面室に放り込んで、クローゼットを漁る。
残念ながら着るものにはそれほど興味を持ってこなかったので選ぶほどのバリエーションはない。姿見の前であれこれ試すがなかなか決まらない。
散々悩んで薄紅色のコットンのシャツに着替えた。襟廻りがダブルに折り込まれてそこだけ鮮やかな紅色が覗いて、ざっくりと切れ込んだ胸元のVカットが少し大人っぽい。
下は少し迷って膝上丈のダークグレーのタックスカートにした。
姿見で首尾を確認する。僅かに胸の盛り上がりが見える胸元が少し大胆かなとは思ったが、堅過ぎず、くだけ過ぎず、なかなかだねと気に入った。
髪を整えて鏡の中の自分に笑いかけた。
鏡の中でほんの僅か右に首を傾げた女のすっかり浮かれた顔に気がついて、少し顔が赤くなった。
男を誘ったことなんて今まで一度もない。
彼氏と呼べる人もいたしセックスもしたけれど、わたしはいつも求められたことを受け入れていただけだ。恥ずかしいこともしたけれどそれはさせられただけだ。自ら進んでしたわけではなかったと思う。
マグロのように横たわって、ただ男の思うがままに、されるがままになっていたに過ぎない。
それなのに、彼に対してわたしは信じられないくらいずっと積極的だった。
骨ばって引き締まった下半身が瞼の奥に浮かんだ。
下着を下ろしたときの濃密な匂いに頭の一部がかっと燃えた。彼のものを口に含んだときの大きさに戸惑って、放出されたものの量におののいた。頭を押さえつけられて、どくどくと喉の奥に流し込まれたものの熱さが忘れられなかった。
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《子供なんだから、あんまり飲んじゃ駄目だよ》と言いながらも、未成年を相手に二人でワインを一本空けた。我ながら何を浮かれているのだろうと恥かしくなるような、95年のシャトー・マルゴー。おまけに目の前に座っている“ガキ”はラベルのフランス語を平然と読んで笑った。
「先生、本の読み過ぎ」
「フランス語なんかやってる暇あったら英語勉強しなさいよ。小憎らしい」
「ヘミングウェイはアメリカ人でしょう」
おっと。渡辺淳一って言わなくて良かった。あぶないあぶない、と思ったがそんなことはお首にも出さない。それに高かったのだ。
それでも、彼がコルクを引き抜くと芳醇で艶かしい香りが強く漂って、わたしたちはグラスに注いだ真紅の液体を微かに揺らしながら、濃密で、そして、おそらく取り返しのつかない時間を共有した。半分以上はわたしが飲んだかもしれない。楽しい会話と、自分で作ったわりにはそれなりに上手く出来た料理、そしてなによりも他人の目を気にしないで彼の表情を眺められることにわたしは深く満足していた。
食事が終わってテーブルからソファに移動した。
食後のコーヒーを入れようとしたら、彼が《やりましょう》と言ってくれたのであっさり任せた。コーヒーの香りが鼻をくすぐって、カップを持ってきた彼が座ろうかどうしようか迷ったのを見て、わたしは少し腰をずらして指定した。
「ここに座りなさいよ」
ベッド代わりにもなる長さ。紫に近い濃いブルーに染められたソファがリビングのほぼ中心にルーフテラスに向けて置いてある。一人用の小さなものがもう一つ。
フローリング張りの床を被う足元にはオレンジ色の敷物。45cm角のこれ以上は素っ気無くしようのない小さな山吹色に塗られたテーブルが一つ。
彼がそこにカップを置いた。
「何もないんですね」「このテラス」
彼の視線が夕闇に沈んで色を失い始めたルーフテラスに注がれた。
「う〜ん、前はプランターのお花とか植木があったんだけど、全部枯れちゃったの」
「ちゃんと手入れしないからでしょ」
「そうよ。だから、植物は諦めて、今はね、テーブルがほしいなって思ってるの」
「どういう?」
「大きくて、がっしりしてて、そこでご飯とか食べれたらいいなって。それでねぇ……夏はパラソル開くの」
振り向いた彼が笑った。ちょっと、小憎らしい。
「木でよければ、作りましょうか」
「できるの?」
「そりゃ、テーブルぐらいなら」「椅子は買ってきた方が廉いでしょうね」
「何色がいいかな?」
「何色でもいいけど、う〜ん、タイルが暗いから白がいいんじゃないですか?」
殺風景なのがことさら嫌いなわけじゃなかったが、わたしはそこに夢を見たのかもしれない。
「庭って雰囲気になるといいな」
開け放したガラス戸から初夏の夜気が忍び込んでいた。風が運んできた遠くの海の匂いと萌える木々の馨しさ。手摺の背後に透ける光の海がわたしたち二人の観客だった。
すぐ隣りに遠慮がちに座った彼の横顔を盗み見て、視線を落とす。ソファから突き出た足の長さに感動した。
「熱いの苦手なの?」
「え? いや、そうですけど、そういうわけじゃなくて……」
「美味しくない?」
薄闇が忍び込んだルーフテラスを眺めていた彼がこちらを見た。
「いや、そうじゃなくて…」「足はもうOK?」
「あぁ、全然平気。ありがとう」「心配してくれてたの?」
「腰も大丈夫ですか?」
「え、あぁ、もちろん」
「痣、残ってません?」
「え? あ、大丈夫よ。たぶん」
「ならいいんですけど」
脳裏にパジャマを捲られて湿布を貼ってもらったこと、そして顔が真っ赤になるようなことを何度もしたことを思い出した。
「もう、やぁねぇ。まだ憶えてるの?」
「そりゃ、そうですよ。たぶん一生忘れないですよ」
真っ直ぐ見詰められて、わたしは顔が火照って思わず目を逸らしてしまった。
甘えるようにそっと彼に寄り掛かっても今日の彼は腕を回してくれない。
彼の肩に顎を乗せる。
「お〜い。この間のこと怒ってるの?」
彼の目が下を向いた。
「そんなことないです」
わたしは座っている彼の正面に廻った。オレンジ色の床敷きに膝をついて彼を見上げた。
彼の膝に手を掛けてすっと背伸びをして彼の顔を覗き込んだ。
「このあいだは、ごめんなさい」「嫌われちゃったかな」
彼が首を振った。
「どうしてそんなこと言うんです?」
わたしはゆっくりと彼の前に立ち上がった。
「見ていてくれる?」
酔っているのだと自分で自分に言い聞かせた。
これからするつもりのことを考えて、感情がぐっと高ぶって動悸が早鐘を打つように一気に跳ねあがった。
シャツの裾に両手を入れて捲り上げる。かまわず首から抜き取って床に落す。
背中に廻した手先でスカートのホックを外してジッパーを引き下す。
手を離すとスカートが足元に丸く輪になった。
びっくりしたような目で彼がわたしを見詰めていた。
背中に廻した手でブラジャーのホックを摘み上げる。
すっと胸が楽になる。
肩紐を落して腕からブラジャーを抜き取って脱いだシャツの上に落す。
そのまま躊躇せずに最後の下着も降ろした。
顔が引きつってがくがくと膝の震えが止まらなかった。
躰を被うものが何もなくなって、わたしは前を手で隠したくなる衝動を必死に押さえた。

わたしは彼の目の前に躰を晒した。
「誘ってるつもりなの。あなたを」「だから、抱いてほしい。触ってほしい」
彼がわたしの顔を、胸を、腹を、陰毛を、太腿を、足を、食い入るように見ていた。
少しだけ足を広げる。
「見たくない?」「お尻おっきくて凄い羞ずかしいけど」
後ろを向いて彼の目の前にお尻を突き出す。
そのままそっと頭だけ振り向くと彼の視線が尻の中心にじっと注がれていて、一気に躰の芯が熱くなる。
「これじゃ、駄目? 魅力ない?」
彼の眼前にお尻を突き出した姿勢のまま、わたしは肩幅より広く足を開いた。
明るい照明の下で、見えてはいけない部分が既に丸見えのはずだ。
その上で、腹から手を廻して人差し指と中指で自らの性器を左右に広げた。既に濡れそぼった襞に指が埋もれて液が廻りに溢れ、指先が温かくぬめった。
闇に沈み始めたルーフテラスが微かな斜光に照らされて、床に張られたタイルのエッジが電子回路の網目のように光った。わたしはいったい何をしているのだろう。
濃い赤と輝度の高いイエローオレンジが絡み合うように交錯して断末魔をあげるように僅かに瞬いて消えていった。
わたしは恥かしさに耐えられなくなって向き直る。
「お願い、あなたも同じ姿になって」
慌てたように彼が立ち上がり、ほんの10秒で着ているものすべてを脱ぎ捨てた。
目の前に立ち上がった彼はわたしよりも頭一つ分背が高い。
差し出した手で彼の両手を掴んだ。
持ち上げた彼の大きな手を広げて自分の胸に押し当てる。
「触って」
彼の手が下から持ち上げるように乳房を包み上げた。親指で固くなり始めた乳首を擦られるとつんとした感覚が背筋を走り抜ける。
「わたしのこと好き?」
見上げた先の顔に訊く。
胸を触られたまま口が合わさる。
頭の芯が痺れ始めて彼の背中に腕を廻す。
耳元で囁かれる。
「もちろん、好きです」
耳たぶを噛まれる。
「大好きです」
「もっと言って」
耳に舌先が捻じ込まれる。
「めちゃくちゃ好きです」
「ずっと年上だし、性格きついし、足太いし、胸もお尻もかっこ悪いし」
反対の耳も同じように。
「きれいです。すごく」
「それに、処女じゃないし」
尖った乳首を指で摘み上げられて、躰が仰け反る。
「もう、何言ってるんですか」「こんなきれいで、奮いつきたくなる人はいないですよ」
滑り降りた手が尻と腰を撫であげる。
膝が笑って腰が抜けた。
するすると滑って彼の太腿にしがみつく。
目の前に屹立しているものに舌を這わせ、呑み込もうと頭を上げる。
口のなかで膨れ上がるものを舌で包み込む。
躰の奥が強烈に疼く。背筋が震える。
苦しくなってわたしは彼の足元に倒れこんだ。
仰向けになって彼を見上げる。
そして、蛙のように膝を抱えて、自ら足を大きく広げた。
「ねぇ、来て」
慌てて彼が脱ぎ捨てたズボンのポケットを探る。
取り出したものを見てわたしは首を振る。
強く振る。
「嫌、大丈夫だから」「直接入れて…お願い」
彼が右手に持った避妊具を毟りとって部屋の隅に投げ捨てた。
「でも…」
「待ってもらったのはそれもあるの。だから、ね。お願い」
足の間に膝まづいた彼がわたしの足首を強く握ってさらに高く大きく広げた。
丸見えになっているはずの股間に先端が触れる。
「早く。早く、頂戴」
待ちきれなくて腰をにじって彼を求める。
熱さを躰が求める。
太く固いものが僅かに挿入される。
「うわっ、うわっ」
羞ずかしいという意識は残っていたけれど、もう声が止まらない。
痛いくらいにめりめりと押し分けるように熱い杭が突き進む。
瞼の裏側で金色の火花がばちばちと音を立てて跳ねまわる。
杭の先端が子宮口に激突した。
圧倒的な快感に背筋が反りかえって、口から悲鳴が迸る。
当たったままくいくいと螺子を回すように圧迫されてもう声が止まらない。
何を言っているのかわからない。
気違いのように叫んでいるだけ。
わたしは狂ったように四肢をばたつかせて暴れまくる。
少しでも深く受け止めようと躰を持ち上げる。
深く押し込まれると甘い快感が全身に広がる。
気が遠くなる快感、死にそうな快感。
躰が浮き上がり、吸い込まれる。
闇と白。白い光が広がり始めて、意識が霧散する。
すべての制御を失って、わたしは波に呑まれ、翻弄され、
ぼろ雑巾のように浜に打ち上げられた。
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「ねぇ、いまいくつ?」
傍らで目を閉じていた彼がわたしのほうを向いて、肩を抱いた。
「歳? 俺早生まれだから。当分17」
「そう。じゃあ、ばれたらわたしクビねぇ」
「どうして?」
「男の先生が女の子と関係を持ったら問答無用だろうけど……、18になってないと県条例違反だから。知ってるでしょ? 青少年なんたら条例っていうの。通称淫行条例」
「あぁ、夜間外出禁止とかあるやつでしょ?」
「それに最近もうチェックが厳しいの。あちこちで問題続出だから」
「猥褻教師? あぁ、うちの学校にもいそうですねぇ……けっこう。先生じゃないですよ」
「だから、ちゃんと大学行って、あたしがクビになったら一生面倒みてね」
彼がわたしを見てくすくす笑った。
「レイプされたことにしたら?」「それをネタにその後も関係を強要されたと」
彼の鼻を摘んでやる。
「馬鹿。冗談でもそういうこと言ったらだめ」
カーテンを開けたままのガラスの向こう。
テラスの手すりの上は濃い藍色に塗り込められて、遥か下界の光が下からぼうっとその藍色を僅かに緑がかった青色に染め上げていた。
遠くから唸るエンジン音とパタパタと空気を打ち据えるヘリコプターのローター。
ドップラー効果でおおよその位置を推定する。東から西へ。陸から海へ。
今、真上を通過した。
ガラスの向こう。点滅した航空灯が緑の海を斜めに赤く滲んで横切った。
白く光った腹の上を撫でるように彼の手が滑る。温かくて大きくて長い指。意外に女性的ですべすべしている。
その手がわたしの陰毛を強く引っ張った。
「抜けちゃうじゃない」
「お守りにしようかと思って……」
なんとなくその発想が可愛くて嬉しくなってしまう。
「じゃぁ、袋作ろうか?」
何を恥ずかしいこと言っているのだろう。自分で自分にびっくりして彼の胸に顔を埋めた。
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「う〜ん、ちょっと、ごめんなさい」
トイレに立とうとしたら、身体がふらふらしてよろけた。
「トイレだったら……」
聞こえたのはそこまでだった。
身体が宙に浮いて彼の首にわたしの腕が巻きついて、結局のところ早春のあの日と同じようにわたしは軽々と抱き上げられていた。
「ちょっと待って、ここはお風呂だって……」
壁の白い大判タイルに眩いばかりの照明が乱反射して、影のない明るさに浸る。
「違うってば。トイレに来たのに……」
「一人でできます?」「前みたいに……手伝いますよ」
わたしは久々の快感に溺れて、浮かれて、おかしくなっていたに違いない。
次に口から出た言葉は思い返せばとんでもない一言だった。
「見たいの?」
彼がこっくりと頷いた。
「そんなところにいたらかかっちゃうよ」
「いいですよ。気にしないで」
「でも…。汚いから……」
「今日も、この間も、あの…飲んでもらっているから…」
「馬鹿。それとこれとは違うでしょ」
「出てくるところは同じでしょう」
「そういう問題じゃないよ……もう出ちゃうよ」
濃い紺色のバスタブの縁にお尻を乗せて、後ろに手をついてわたしは大きく足を広げていた。その目の前に彼が跪いて、広げた足の中心を食い入るように見詰めていた。
割れ目から最初小さく溢れた液体が、すぐに勢いをもって音を立てて彼の躰にかかった。その奔流を彼がいきなり顔を突き出して口で受け止めようとする。
「だめ! だめ」
飛沫を掛けながら彼の開いた口に液体が飲み込まれているのを見てわたしは慌てた。
更に太腿を抱えられて彼の頭がわたしの股間に近づいてくる。
止めようと思ったが止まらない。
唇から伸びた舌がおしっこを吹き出している性器にめり込んだ。
わけのわからない快感が突上げてきて、思わず彼の顔に股間を打ち付けるように突き出してしまった。飛沫が跳ねて自分の太腿までもが生暖かく濡れた。
「馬鹿、馬鹿」
髪の毛から躰まで、全身わたしのおしっこにまみれて下腹にすがりついている彼を見て、わたしは恥辱にまみれながらも、わけのわからない感動に翻弄されていた。
「飲んだの?」
「全部じゃないけど。少しだけ」
「もう、信じられない」「病気になったらどうするのよ」
「大丈夫ですよ。胃腸はいたって丈夫ですから」
「男の人におしっこ飲ませるなんて、わたし変態みたいじゃない!」
「そんなことないですよ」
「初めて抱かれて、その日にこんなことするなんて恥かし過ぎるよ」
立ち昇る臭いにわたしは現実に引き戻された。
慌ててシャワーを掴んで彼の頭からお湯を掛け始めた。指先を髪に突っ込んで乱暴に洗う。
お湯を掛け流して顔、首筋、肩と洗い流していく。
何度も何度も擦って、ようやく恥かしい臭いが消えた。
……そういえば、わたしもこうやって洗ってもらった……。
春の記憶が鮮明に浮かび上がった。
ボディ・シャンプーをスポンジにとって彼の首筋に押し付けた。シャンプーの爽やかな匂いが広がって少し安心が広がる。そのまま擦るように彼の身体を拭っていく。
「手、上げて」
彼の目は洗っているわたしをじっと見ている。
凛々しくて格好良い。思ったよりはずっと肩幅も胸も広い。腕は長くて直線的だ。脇腹からお腹にまでスポンジが降りて、その股間に直立しているものを見てわたしは照れてしまう。顔から火が吹き出そうだった。手が止まってしまうわたし。
「あの…、普通に洗っていいの?」
「え? あぁ、はい。別にそんな大したものじゃないし」
「どうしたんですか。顔、真っ赤ですよ」
思いきって手を伸ばす。
恥かしいから彼に見られないように下を向いて、かちんかちんになっているものを片手で掴んでスポンジを押し当てた。両手で握ってもまだ先が余る。
先端をそっと擦ると全体が手の中でぬっと動いて硬さが増した。膨らんだ部分を指先で包むように触れるとすべすべして柔らかい。可愛くて滑稽で不思議だ。
硬い茎の根元の柔らかい部分をそっと掴むと中に丸いものが入っているのがわかる。よけい恥かしくなって、慌てて奥へ進む。お尻から足を一通り洗ってしまって、後ろを向かせた。背中を上から下に一気に流して、固く引き締まった腰からお尻を眺める。
目が離せなくなってしまった。わたしを抱いた男の躰が目の前にあった。
頭の中心が疼いて目が霞みはじめた。
自分が再び欲情し始めたのがはっきりわかった。
背中から彼に抱きついて、胸と広げた股間を彼に押しつけた。抱きかかえているわたしの腕と足を彼が擦って、わたしは再び快楽が欲しくて堪らなくなっていた。
「交代」
腕を引き剥がされて向き直った彼が、床に放り出されていたスポンジを手に取った。
明るい浴室で彼に躰を洗われながら、わたしはもうくらくらだった。スポンジで胸の先端を擦られたときには思わず声が出てしまった。スポンジから泡を取った彼の手が股間に伸びてきたときは、もう刺激が欲しくて気が狂いそうだった。自分でしたことがないほど丁寧に襞の隙間から裏側まで洗われて、わたしは半分泣きべそをかきながら、大きく足を広げたまま腰が抜けていた。泡だった小指の先が肛門に入れられて、喘ぎ始めた声がもう止まらない。
「ねぇ、ねぇ。もうだめ。ね。早く抱いて。早く」
お湯が一際激しく躰を打って泡が洗い流されると、わたしは床に座って胡座をかいた彼に跨って抱きついた。右腕で首に抱きついたまま、左手で位置を調整する。泡とは別の液体が既に溢れ出ている。
何も感じる間もなく腰を垂直に降ろしていく。めりめりと太い杭が躰の中心を押し分ける。あまりの快感にわたしは悲鳴を上げる。根元まで飲み込んでしまうとわたしは満たされた感触にどっぷりと浸かってしまってもうなにも考えられない。
彼が腰を腕で抱えた。
口と口が合わさってめちゃくちゃにキスする。
わたしは我慢できずに直ぐに腰を動かし始める。抉るように強く深く。叩きつけるように。
止まらない。止まらない。止まらない。
彼の頭を、背中を、首筋を、爪を立てて掻き毟る。
突き上げる快感を求めて躰が勝手に動いて、わたしはもう何度目なのかまったくわからない最後の高みに絶叫とともにまっしぐらに昇り詰めた。
『ルーフガーデン−6』(続く)